岩崎 宏武

Interview

目先の利益ではなく長期的な視界で、業界をよくすることに取り組む。カーセンサーだからやれることを。

岩崎 宏武

中古車買取クレームは業界の大きな課題。
でも自主規制団体のルールが守られていない。
「それはなぜ?」という疑問が出発点だった。

これまで中古車の出張査定では、中古車を売りたいと思っている人から買取事業者に対する非常に多くのクレームが発生していました。たとえば「やっぱり売るのをやめたい」と翌日に連絡をしたら多額の違約金を請求されたり、最初の査定では見つからなかった新たな瑕疵を後から報告され大幅に減額されてしまったり。こうした消費者の声を受けて、改正特商法が制定されました。これは、クーリングオフ期間を設けて、買い取ってから7日間は取り消しができるようにしましょうというもの。もしもこれが実際に施行されたら、自動車を保管しておく倉庫が別に必要となるなど業界にとっては大きなダメージ。自動車流通がおかしくなってしまいます。そこで「自分たちで問題を解決します」と買取事業者、有識者、メディアによる自主規制団体(JPUC)が作られ、買取査定を健全化するためのルールを策定しました。でもあくまで自主規制のルールで罰則規定がないことから、誰も守らない状態に。私には「みんなで決めたことなのに、なぜ守れないのだろう?」という疑問がありました。直接的ではなくても、カーセンサーにも業界団体に属する一員としての責任がある。「ルールが守られるための罰則制度を設計しよう」。私に白羽の矢が立ち、足かけ2年半にわたる仕事がはじまりました。

「なぜルールを守ることを選択できないのか?名だたる社長にひたすら話を聞いて回った。」

岩崎 宏武

最初に提案した設計はみんなに批判された。
「まず4カ月間、試して検証しましょう」
そこで見えた事実が業界の意識を変えた。

買取査定を健全化するルールが徹底されれば業界のイメージもよくなるし、クルマを売りたい人にも喜ばれる。それなのに「なぜできないのだろう?」。そこがわからなかった。名だたる上場企業の社長に話を聞きに行きました。「社長、なんでできないんですか!」と。意見交換を繰り返し、わかってきたことは、ルールを守るのが正しいことはわかっているけれど、営業上の理由もあり、自分たちから率先してはじめるのは難しいということ。罰則を規定するなら「はっきり時期を決めてもらうほうがありがたい」と言われることもありました。こうした現場の生の声を集めることと並行して、各種法律の勉強も行い、提案した設計書は業界から批判されることに。このやり方をしたら自主規制団体が崩壊する、たくさん買い取る事業者ほどクレーム数は多くなる、といったことが言われました。でもやってみなければわからない。まずは4カ月間、試して検証することを認めてもらいました。その結果、批判された内容はすべて実際の状況と異なることがわかりました。買取査定のクレームは数や規模の問題ではなくて、従業員の意識の問題だということが明確になりました。社長が自ら意識を変えて、従業員の意識を変えることで、この問題は解決することができる。目指す道筋が見えました。そこで全国の買取事業者を集めて説明会を実施。2018年7月に罰則規定を適用しました。

「なくすのは無理だと言われていたクレーム数がゼロに。劇的な変化が現れた。」

岩崎 宏武
岩崎 宏武

業界をもっとよくしていくことが、
継続して事業が成長していくことにつながる。
ひとつ解決してもまた次の課題がある。

今回の設計でもっとも重視したのは、改善をどう促していくかということ。この4月にはついにゼロになりました。事業者一人ひとりの意識が変わり、営業行動そのものが変化した結果です。業界からは「ここまでできると思わなかった」「時間をかけてもやりきるってすごいね」「感服したよ」といった言葉もいただきました。一方で、ひとつの課題が解決しても、さらなる課題が出てきます。「これも解決できないかな」と新たな相談をされるようになりました。この仕事を振り返って思うのは、“不”に正面から向き合って解決するのがリクルート精神ということ。カーセンサーは目先の売上げ以上に、その先にある正しいことを目指して事業をつくってきた歴史があります。買取査定におけるクレームをなくすというような業界全体に関わることは、どこでもできるわけではなく、業界を動かす影響力を持ちたいという強い意志がなければできないこと。私は業界をもっとよくしたいし、家族や友人に自信を持って勧められる世界観やサービスを作っていきたいと思っています。商品企画として、常に複数の案件に携わっていますが、その意識はどんなときも持ち続けていきたいですね。

「家族や友人に自信を持って勧められる世界観やサービスを作っていきたい。」

岩崎 宏武

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